企業のDX推進や業務効率化が加速する中、基幹システムの刷新を検討する企業が増えています。その際によく耳にするのが「SAP」や「SAPコンサル」という言葉です。
しかし「SAPとは具体的に何を指すのか」「SAPコンサルタントはどのような仕事をするのか」「未経験からでも目指せるのか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では、SAPコンサルタントの基礎知識から具体的な仕事内容、年収相場、将来性まで詳しく解説します。これまで企業支援を行ってきた経験から、実務で役立つ情報をお届けしますので、ぜひ参考にしてください。
SAPコンサルとは?基礎知識とSAPコンサルタントの役割・年収を解説
SAPコンサルタントを理解するには、まずSAPそのものと、コンサルタントが果たす役割を把握することが重要です。
SAPとは何か―基幹システムERPの概要を分かりやすく解説
SAPとは、ドイツに本社を置く世界最大級のソフトウェア企業「SAP社」が提供するERPパッケージソフトウェアの総称です。ERPはEnterprise Resource Planningの略で、企業のヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を一元的に管理・活用できるITシステムを指します。
2025年時点で、グローバルのERP市場におけるシェア率は約26%と圧倒的なトップシェアを誇り、日本国内でも大手企業を中心に広く導入されています。代表的な製品は「SAP S/4HANA」で、会計管理(FI/CO)、販売管理(SD)、在庫管理(MM)、生産管理(PP)、人事管理(HR)など、企業活動に必要な機能がモジュール単位で提供されており、業種や企業規模に応じて柔軟にカスタマイズできる点が大きな特徴です。
SAPコンサルタントとは?SAPエンジニアの違いとは
SAPコンサルタントとは、企業の経営課題や業務課題を分析し、SAP導入による解決策を提案・実行する専門家です。
クライアントとの要件定義から始まり、業務プロセスの分析、システム設計、導入後の運用サポートまで、プロジェクト全体を俯瞰しながら推進します。経営層や業務部門と直接対話し、ビジネスとITの橋渡しをする役割を担います。
SAPエンジニアが、コンサルタントが定義した要件に基づいて、実際のシステム開発や技術的な実装を担当するなか、ABAPと呼ばれるSAP専用のプログラミング言語を用いたカスタマイズ開発、データベース設定、システムテスト、バグ修正などが主な業務です。
実務上はこの境界線が曖昧な場合もありますが、一般的には上流工程から経営視点で関わるのがコンサルタント、技術実装に特化するのがエンジニアと理解しておくとよいでしょう。
SAPコンサルタントの具体的な仕事内容とは?
SAPコンサルタントの業務は多岐にわたりますが、主にプロジェクト参画、モジュール別の専門性、組織別の役割、クライアント対応の4つの視点から理解できます。
参画するプロジェクト
SAPコンサルタントが参画するプロジェクトは大きく分けて「新規導入」「システム移行」「運用保守・改善」の3つのフェーズに分類されます。
新規導入プロジェクトでは、ERPを初めて導入する企業や、他社製品からSAPへ切り替える企業を支援します。現状の業務フローを詳細にヒアリングし、どの業務をシステム化すべきか、どのモジュールが必要かを見極めることから始まります。
システム移行プロジェクトは、従来のSAP ERPから最新のSAP S/4HANAへのバージョンアップ案件が代表的です。2025年問題や2027年問題と呼ばれる旧システムのサポート終了に伴い、多くの企業が移行を進めており、この分野の需要は特に高まっています。
運用保守・改善フェーズでは、システム稼働後の安定運用をサポートします。ユーザーからの問い合わせ対応、システムのバージョンアップ対応、業務変更に伴う追加開発の要件定義などを担当します。
業務・業界別の得意分野・担当モジュール解説(会計・物流・人事など)
SAPのモジュールは業務領域ごとに細分化されており、コンサルタントは通常1~2つのモジュールを専門領域として担当します。
①会計モジュール(FI/CO)
会計モジュール(FI/CO)は、財務会計と管理会計を統合管理する領域です。仕訳データの自動生成、予算管理、原価計算、収益性分析などの機能を提供し、決算業務の効率化や経営指標の可視化を支援します。
②物流モジュール(SD/MM)
物流モジュール(SD/MM)は、販売管理と在庫管理を担います。受注から出荷、請求までの販売プロセスや、購買から入庫、在庫管理までの調達プロセスを最適化し、製造業や小売業での導入事例が多く見られます。
③人事モジュール(HR)
人事モジュール(HR)は、採用から退職までの人事情報を一元管理し、給与計算、勤怠管理、タレントマネジメントなどの機能を提供します。生産管理モジュール(PP)は、製造業における生産計画、資材所要量計画、製造指図などを管理し、生産効率を最大化するための設計が求められます。
コンサルティングファーム・SIer・大手企業での役割比較
SAPコンサルタントの働く環境は大きく「コンサルティングファーム」「SIer」「事業会社(ユーザー企業)」の3つに分かれます。
①コンサルティングファーム
コンサルティングファームでは、戦略立案から導入、運用まで一気通貫で支援するケースが多く、上流工程から関わる機会が多いため、高度な提案力とプロジェクトマネジメント能力が求められます。
②SIer
SIerでは、システム開発・実装に重点が置かれます。要件定義から設計、開発、テスト、運用保守までを担当し、技術的な深掘りが求められる一方、複数のプロジェクトを同時並行で進めることも多く、幅広い経験を積めます。
③事業会社のIT部門
事業会社のIT部門では、自社のSAPシステムを管理・運用する立場になります。外部ベンダーとの調整役を担いながら、社内ユーザーの要望を吸い上げてシステム改善を進めます。
クライアント対応・提案業務で求められる専門知識とは?
SAPコンサルタントには、技術的知識だけでなくビジネス理解とコミュニケーション能力が不可欠です。
クライアント企業の経営層や業務部門長と対話する際には、IT用語を多用せず、ビジネス上の課題と解決策を分かりやすく説明する必要があります。例えば「このモジュールを導入することで在庫回転率が何%改善し、キャッシュフローにどう影響するか」といった形で、経営指標に紐づけた説明が求められます。
また、業務部門の現場担当者からは日々の業務における細かな不便や要望をヒアリングし、それをシステム要件に落とし込む作業も重要です。論理的思考力、交渉力、そして困難な状況でも冷静に対処できるストレス耐性も求められるといえます。
SAPコンサルタントになるには
SAPコンサルタントへのキャリアパスは多様ですが、必要なスキルと資格、転職戦略を理解しておくことが重要です。
未経験でもなれる?必要なスキル・知識
未経験からSAPコンサルタントになることは可能ですが、相応の準備と学習が必要です。完全なIT未経験者がいきなりSAPコンサルタントになるのは難易度が高いものの、関連する経験やスキルがあれば転職の可能性は広がります。
有利になる経験としては、まず業務系システムの開発経験が挙げられます。SEやプログラマーとして会計システムや販売管理システムの開発に携わった経験があれば、SAPの各モジュールへの理解が早まります。
次に事業会社での業務経験も評価されます。経理、財務、人事、購買、生産管理といった部門で実務を経験していれば、業務プロセスへの深い理解を持った状態でSAPコンサルタントになれます。実際、経理部門出身者がFI/COモジュールの専門家になったり、人事部門出身者がHRモジュールのコンサルタントになったりするケースは珍しくありません。
技術的な知識としては、データベースの基礎知識、SQLの理解、システム開発のライフサイクル(要件定義、設計、開発、テスト、運用)への理解が求められます。
求められるSAPコンサルタント資格
SAPコンサルタントになるために資格は必須ではありませんが、「SAP認定コンサルタント資格」を取得することで転職や案件獲得が有利になります。
SAP認定コンサルタント資格は、SAP社が公式に認定している資格で、2025年時点で140種類以上が存在します。大きく「アソシエイト」「スペシャリスト」「プロフェッショナル」の3つのレベルに分かれています。
アソシエイトレベルは、SAPの基礎知識を問う入門的な資格で、未経験者や経験の浅い方が最初に目指すべき資格といえます。スペシャリストレベルは、特定のモジュールや機能領域における専門知識を証明する資格です。プロフェッショナルレベルは、実際のプロジェクト経験と深い専門知識が問われる上級資格で、取得することでシニアコンサルタントやプロジェクトマネージャーとしての信頼性が高まります。
転職・求人情報の探し方とエージェントの活用法
SAPコンサルタントの求人は、専門性の高いエージェントを活用することで効率的に探せます。
IT・コンサル業界に特化した転職エージェントでは、SAPコンサルタント案件を豊富に保有しています。大手総合コンサルティングファームからSIer、事業会社のIT部門まで、幅広い選択肢の中から自身の経験やキャリアプランに合った企業を紹介してもらえます。
フリーランス案件を探す場合は、フリーランス専門のエージェントやプラットフォームが有効です。SAPコンサルタントのフリーランス案件は高単価なものが多く、月額100万円~200万円の案件も珍しくありません。ただし、一定の実務経験(概ね3年以上)が求められることが一般的です。
転職活動では、自身の強みを明確にすることが重要です。特定のモジュールでの経験、プロジェクトマネジメント経験、特定業界(製造業、金融業など)での知見など、差別化できるポイントを整理しておきましょう。
入社後の成長・キャリアパスの選択肢
SAPコンサルタントとして入社後は、専門性を深める方向とマネジメントに進む方向の大きく2つのキャリアパスがあります。
専門性を深める道では、まず特定のモジュールのスペシャリストとして経験を積み、その後、複数のモジュールを横断的に理解するソリューションアーキテクトや、特定業界に特化したインダストリーコンサルタントへと成長することが可能です。
マネジメントに進む場合は、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャー、そしてパートナーやディレクターといった経営層へとステップアップします。また、SAPコンサルタントの経験を活かして独立・起業する選択肢もあります。フリーランスとして高単価案件を受注したり、自身のコンサルティング会社を立ち上げたりするケースも増えています。
SAPコンサルタントの年収・相場
SAPコンサルタントの年収は、経験年数や専門性、所属企業によって大きく変動します。
SAPコンサルタントの平均年収と職種・経験別の相場比較
SAPコンサルタントの平均年収は600万円~1,000万円程度とされていますが、これは経験年数や役職によって大きな幅があります。
未経験からSAPコンサルタントとしてキャリアをスタートする場合、年収は400万円~500万円程度からのスタートとなることが一般的です。3~5年の実務経験を積んだミドル層では、年収600万円~800万円が相場となります。
シニアコンサルタントやプロジェクトマネージャークラスになると、年収は1,000万円を超えることも珍しくありません。パートナーやディレクタークラスでは、1,500万円~2,000万円以上の年収も可能です。
フリーランスSAPコンサルタントの場合、月額単価は80万円~200万円が相場で、年収換算すると1,000万円~2,400万円程度になります。高い専門性とプロジェクトマネジメント能力があれば、正社員以上の収入を得ることも十分可能です。
年収が高い理由と単価を決める専門性・スキル要素
SAPコンサルタントの年収が他のIT職種と比較して高水準な理由は、需要と供給のバランスにあります。
まず、SAP導入プロジェクトは企業の基幹システムに関わる大規模案件が多く、失敗が許されないミッションクリティカルな業務です。そのため、経験豊富で信頼できるコンサルタントには高い報酬が支払われます。
次に、SAPコンサルタントの慢性的な不足が挙げられます。2025年問題や2027年問題を背景に、多くの企業がシステム移行を急いでおり、SAPコンサルタントの需要が供給を大きく上回っています。この需給ギャップが高単価につながっています。
単価を決める要素としては、担当できるモジュールの数、プロジェクトマネジメント経験の有無、特定業界の知見、英語力、そして最新技術への対応力が挙げられます。
大手・企業規模別の年収・待遇の違い
所属する企業の規模や種類によっても、年収や待遇には差が生じます。
大手総合コンサルティングファーム(アクセンチュア、デロイトトーマツ、PwCなど)では、シニアコンサルタント以上であれば年収1,000万円超も珍しくなく、マネージャークラスでは1,500万円~2,000万円も視野に入ります。
大手SIer(富士通、NTTデータ、日立製作所など)では、安定した給与体系が特徴です。年収水準は総合コンサルと比較するとやや控えめですが、福利厚生が充実しており、ワークライフバランスを保ちやすい傾向にあります。中堅層で700万円~900万円、管理職で1,000万円~1,200万円が目安です。
SAP社(SAPジャパン)自体に入社する場合、年収は非常に高水準です。平均年収は1,000万円~1,200万円程度とされています。
SAPコンサルはしんどい?つまらない?やめとけと言われる理由と真実
SAPコンサルタントについて「激務」「つまらない」といったネガティブな意見を耳にすることがありますが、その実態を正しく理解することが重要です。
激務・大変だと感じるポイントと業務の効率化対策
SAPコンサルタントが激務になりやすい理由として、プロジェクトの繁忙期における長時間労働が挙げられます。
特に本番稼働直前のフェーズでは、システムテスト、ユーザートレーニング、データ移行作業などが集中し、深夜や休日の作業が発生することがあります。また、複数プロジェクトの掛け持ちも負担の一因です。
こうした状況への対策としては、プロジェクトマネジメントの徹底が挙げられます。要件定義段階でスコープを明確にし、変更管理プロセスを厳格に運用することで、無秩序な仕様変更を防げます。また、自動化ツールの活用も有効で、データ移行ツールやテスト自動化ツールを導入することで、手作業の負担を軽減できます。
さらに、働き方改革の進展により、大手企業では労働時間管理が厳格化されています。リモートワークの普及やフレックスタイム制度の導入により、以前と比較して働きやすい環境が整いつつあります。
口コミ・評判の実態解説
SAPコンサルタントについての口コミでは、「つまらない」「同じことの繰り返し」といった意見が見られることがあります。
こうした意見の背景には、特定のモジュールやフェーズに特化しすぎることでマンネリ化するという実態があります。例えば、運用保守フェーズに長期間携わる場合、日常的な問い合わせ対応やマイナーな改修作業が中心になり、新しい学びや成長を感じにくくなることがあります。
しかし、実際にはプロジェクトや役割によって経験の幅は大きく異なります。導入プロジェクトでは業務改革の提案から設計、開発まで幅広く関われますし、複数の業界や企業規模のプロジェクトを経験することで、多様な業務知識やコンサルティングスキルを習得できます。
やりがい・成長・魅力とは
一方で、SAPコンサルタントならではのやりがいや魅力も数多く存在します。
最も大きな魅力は、企業の経営課題解決に直接貢献できることです。基幹システムは企業活動の中核を担うため、SAP導入によって業務効率が劇的に改善したり、経営判断のスピードが向上したりする様子を目の当たりにできます。
また、大企業の経営層と直接対話できる機会も魅力の一つです。若手のうちから経営戦略や意思決定プロセスに触れられることは、ビジネスパーソンとして大きな財産になります。
さらに、グローバルに活躍できる可能性があります。SAPは世界標準のERPシステムであるため、海外拠点の導入プロジェクトに参画したり、グローバルプロジェクトのメンバーとして各国のチームと協働したりする機会があります。
SAPコンサルタントの将来性と今後の市場動向
SAPコンサルタントの将来性について、市場動向とキャリア戦略の両面から考察します。
業界動向・需要と今後の展望(市場・案件数・企業動向)
SAPコンサルタントの需要は、今後も中長期的に高い水準を維持すると予測されます。
その根拠として、まずERP市場の継続的な成長が挙げられます。株式会社ITRの調査によると、日本国内のERP市場は2022年度の1,645億円から2026年度には2,420億円規模まで拡大すると予測されています。
特に注目すべきは中堅・中小企業市場の拡大です。SAP社は中堅企業向けの「SAP Business ByDesign」や中小企業向けの「SAP Business One」などの製品ラインナップを拡充しており、新たな導入案件が継続的に生まれる見込みです。
また、2027年問題への対応も大きな需要要因です。SAP S/4HANAへの移行期限が2027年末に設定されており、それまでに多くの企業が旧システムからの移行を完了させる必要があります。
一方で、AI・自動化技術の進展により、定型的な作業は徐々にツールに置き換わっていく可能性があります。コンサルタントにはより高度な提案力や業務知識が求められるようになるといえます。
コンサルタントとして成長するためのキャリア戦略
長期的にSAPコンサルタントとして活躍し続けるためには、継続的なスキルアップと戦略的なキャリア構築が不可欠です。
まず重要なのは、複数のモジュールや領域に精通することです。一つのモジュールだけでなく、関連する複数のモジュールを理解することで、より包括的な提案が可能になります。
次に、特定業界への深い知見を持つことも差別化要素になります。製造業、小売業、金融業など、業界ごとに業務プロセスや規制要件は大きく異なり、特定業界のエキスパートとして認識されることで、高単価案件や重要なポジションを獲得しやすくなります。
また、最新技術へのキャッチアップも欠かせません。SAP BTP、SAP Analytics Cloud、AI/機械学習、IoTといった先端技術とSAPの統合事例について学び続けることが重要です。
まとめ
本記事ではSAPコンサルとは何か、その役割や仕事内容、年収、将来性について解説してきました。今回の結論としては、SAPコンサルタントは高い専門性と市場価値を持つ職種であり、適切なスキル習得とキャリア戦略により長期的に活躍できることが重要なポイントであり、実務に直結する考え方だといえます。
これまで多くの企業支援を行ってきた経験からも、基幹システムの刷新は企業の競争力を左右する重要なテーマであり、そこに関わるSAPコンサルタントの役割は今後も欠かせないものになると感じています。
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